大ちゃん伝説
満天の星と蒼い月が浮かぶ静かな夜
柔らかくて暖かいオーラに包まれて瞳を開けた
「もうすぐだよ ・・・ もうすぐ ・・・」
声の主はふぃー
「陽が昇ると同時に花が咲く ・・・
ここで一緒に陽が昇るのを待とう」
そう言っておいらの横に腰を下ろす
「ちゃんと用意してきた
チビの為の蒼い服と蒼い帽子 ・・・
本来なら女神に任せるのだが ・・・
始まりの二人と同じように過ごすことにした」
『うん ・・・ ふぃ~のそばにいるよ ・・・』
おいらの声は聴こえてないけど
答えずにはいられなかった
「また一緒に歌を謳ってくれるかい?
セリーが ・・・
ディル達が ・・・ 好きだった歌を ・・・」
フィーの声が凄く淋しそうに聴こえる
小さく溜息をついて
瑠璃の空を仰ぎ見た
「いっしょのうちゃうよ ・・・
みんながすきだっちゃうたを」
「セリーは意地悪でな ・・・
まだ来るなって ・・・
まだやれることがあるはずだって ・・・
あの世界は ・・・ もう手遅れなのに ・・・」
『なにが ・・・ ちぇおくれなの?』
「切り離すべき時は近付いてる
それが済めば ・・・
セリーも許してくれるだろう ・・・」
『ゆるちてくれないの ・・・
じぇったいだめなの ・・・
きりはなちたら ・・・』
フィーは全ての力を使って
人の世界とエルフの国を切り離す
力を使い果たしたら ・・・
フィーは ・・・ フィーの光は消えちゃう ・・・
桜の精霊さんが言ってた
始まりの5人の力はすごく強いって
(その中でもフィーは特別)
だから普通のエルフ以上に長生きをする
なのに4人が眠りについたのは異例
眠りについた4人は美しいまま
フィーだけ姿が変わってる
それも可笑しいって ・・・
(フィーは不老なのに ・・・)
早く ・・・ 大ちゃんに会わないと ・・・
フィーを ・・・ 助けないと ・・・
おねがい ・・・ おいらに力を貸して ・・・
フィーが目覚めの歌を謳い始めた
もうすぐ陽が昇る
森の夜明けは幻想的
瑠璃を纏った森に
ゆっくりと白い色が混じりはじめ
樹々の隙間から
無数の金色の光が矢のように降り注ぎ
天色の空を連れて来る
陽の光に溶けたフィーの歌が
蒼い花を包み込む
透明な蒼の光に包まれおいら ・・・
大きく伸びをして瞳を開ける
「チビ ・・・ 待ってたよ」
ふぃーがおいらに手を伸ばす
蒼い瞳が真っ直ぐにおいらを見つめて
嬉しそうに笑ってくれた
背中の羽を大きく広げて
蒼い花から飛び上がり
ふぃ~の腕の中に飛んでいく
名前を付けて貰えるまで
言葉が話せない ・・・
「チビ ・・・ 来てくれてありがと ・・・
君の名は ・・・ 蒼の妖精さとし」
「おいらは ・・・ さとち ・・・ 」
まだ上手に話せない ・・・
だから ・・・ 桜の木の側の家を指さす
「あそこに入りたい?」
思いっきり頷く ・・・
大ちゃんに会わないと ・・・
蒼の森の中にある家は
あの方が一人で過ごすための家
そして ・・・ ふぃーとおいらが生れた場所